台湾=宝島×鬼島 滞在記

台湾企業で働く日本人が台湾についてテキトーに語るブログ

台湾は「多元社会」だから好き -親日以外の台湾の魅力を語ってみる- その3

前置きが長かったですが、「親日」以外の台湾の魅力を(テキトーに)語る今シリーズ、1つ目は「多元社会」です。(分かりやすくするために、タイトルをちょっと変えました)

 

私は台湾が「多元社会」だから好きです。

より正確に言えば「人々が台湾が多元社会であることに“自覚的”」だから好きです。

 

■台湾は多様な社会

 

台湾は台湾原住民、ホーロー人、客家人外省人(戦後に中国大陸から台湾に渡った人々)に加え、最近では東南アジアや中国大陸などから嫁いだり、他国・地域から移民してきた「新住民」も増えており、さらに「外労」と呼ばれるタイ、フィリピン、ベトナムインドネシアからの労働者も含めるとかなり多様な社会です。

 

日本はどうでしょうか。これについては色んな意見があると思いますが、自分としては、日本って「すでに多様な国になりつつあるんじゃないか」と思ってます。街中を歩いている時の「体感」としてもそうですし、(1億を超える人口を持つ関係上、少数ではありますが)元を含めた外国人や外国にルーツを持つ人々は社会の中に確かにいて、経緯や現状はともかく在日韓国・朝鮮人日系人なども日本社会の構成要素であるのも事実です。

 

ここで、最初の話に戻りますが、程度にかなり差はあれど、多様性を持った国である日台両国を行き来していて感じるのは、日本人と比べると台湾人は「自分たちの社会が多元的であることに自覚的だな」ということです。あの馬英九のおっさんですら、演説で台湾が多元社会であると語ってます。本音はともかく。(というか、“外省人”で“香港生まれ”で“台湾”の総統をやっている彼自身もある意味では多様性を内包した人間かもしれません)

 

■現在の台湾は“理想的”な多元社会ではない

 

もちろん、台湾は現状、歴史的経緯によるアイデンティティーの対立や、台湾原住民に対する差別、中国大陸や東南アジア出身者を蔑視する姿勢など、多様性を持った社会ゆえの問題を抱えていて、与野党の政治的な対立を中心に「社会が分裂している」と感じることもあります。

 

だから、現在の台湾を「理想的な多元社会」と諸手を挙げて称賛するつもりはありません。ないですが、台湾の人々が自身の社会が多元的であることを自覚しており、それゆえに問題意識が強いことも確かで、こうした対立や差別の問題が時間とともに解決、もしくは緩和の方向に向かっていくための土台が台湾社会にはあると、私は信じています。

 

■「和を以って貴しと為す」の本来の精神

 

「和を以って貴しと為す」という言葉があります。日本人が自身の国民性を表すのによく使う言葉かと思います。ただ、あの言葉の本来の精神というのは、学校で教えられたような「互い(もしくは一方)が我慢をして平和を得るべき」というものではなく、「そもそも人はそれぞれ異なっているということを認め、尊重した上で、議論を尽くしコンセンサスを得るべきだ」というものではないかと私は認識しています。(その解釈について以下の動画が結構分かりやすく解説しています)

www.youtube.com

 

 

この「本来の精神」を、日台どちらの社会がより実践できているかといえば、私は台湾社会の方だと思っています。(もちろん完璧ではないですが)

 

その1つが学生運動やデモで、昨年3月のヒマワリ学生運動などを知っている人はある程度分かるかもしれませんが、台湾のそれは日本に比べるとより大規模で頻度も高いです。そしてそこでは、価値観や背景の異なる人々が(議論を前提として)自身の考えや意見を公にしているわけです。たとえそれがセンシティブな政治問題であっても。

 

台湾のデモがそれなりの規模と頻度で起きる理由は色々あるでしょうが、その1つには、台湾社会には「意見を表明することをタブー視しない空気がある」からだと思います。もちろんそれが平和的な方法で行われるものという前提はありますが。

 

■タブー視しない背景には何があるか

 

この背景には「自分と違う意見があることを許容する。同意はできなくとも」「だからあなたも私の意見の存在を許容してほしい、同意しなくていいから」という姿勢を持つ人が台湾には多いことが強く関係していると思います。いうなれば「私は私、あなたはあなた」というスタンスで、無理やり均一化しようという「同調圧力」が弱いともいえます。(※家族となるとまた違ってきますが)

 

そして、この台湾人の国民性を醸成してきたものこそが、台湾の「多元社会」であり、それに対する人々の“自覚”だと私は思うわけです。日本よりさらに狭い島国に住み、歴史的経緯もあって多様性と付き合っていかざるを得ない台湾の人々が生んだ「距離感」といえるかもしれません。また、こうした特性は「民主主義」という建前を手に入れたことでより強化されたようにも思います。

 

■だから私は台湾が好き

 

台湾人の中にはこの国民性を「台湾人は自分が言いたいことばかり言って自由すぎる」とか「まとまりがない」と自虐的に扱う人も多いし、実際ネガティブな面もあります。

 

でも、私はこの国民性が、台湾を自由で民主的で「自分は他人と違うけれど、それでいいんだ」と思える寛容な社会にしていると日々実感しています。

 

私はそんな社会をつくってきた台湾人と台湾が大好きなんです。